「エンジニアとして、もっと単価の高い仕事を受けたいな。でもどうすればいいんだろう?」
「転職を考えているんだけど、求められるIT人材になるにはどうすればいいのかな」
こんなふうに悩んでいる人は少なくありません。
でもなかなかその答えを見つけ出すのは難しいですよね。
上位の資格取得を目指してスクールに行くのが良いのかと思えば、「資格なんか持っていても意味がない!経験年数が全てだ」なんて声も聞こえてきて、何を信じれば良いのか分からず困ってしまいますよね。
本記事では独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)の資料を元に、IT業界が今抱いている課題を知って価値あるIT人材になるためにどうすれば良いのかを解説していきます。
読み終わる頃には、IT人材として価値を上げるために、これからどう行動すべきかが分かるようになりますよ。
日本のIT業界が抱える課題:IT企業の過半数は価値ではなく「エンジニアの作業量」で取引している
過半数のIT企業でおこなわれているのは、要件通りに進める受託開発
(出典:独立行政法人 情報処理推進機構 IT人材白書2018)
大前提として、日本のIT企業の過半数が受託開発を生業としていて、全IT人材のうちおよそ2/3の人々がそこで働いているという状況があります。
受託開発とは、顧客が業務で使用する情報システムやソフトウェアなどの開発を請け負うことを指しています。受託開発ではウォーターフォール型で仕事が進むのが一般的です。
ウォーターフォール型では、まず最初の要求定義でユーザー企業の希望を聞き出して、いつまでにどんなソフトウェアを作るかを決めてしまいます。そこから、設計、コーディング、テスト、運用と、ひとつの工程を完了させたら次の工程へ、下のイメージ図のように順番に進めていきます。これなら、プロジェクトがどのくらい進んだかが一目瞭然ですよね。数ヶ月〜数年単位で進むような大規模なプロジェクトでも、進捗管理しやすいのがウォーターフォール型の特徴です。
(Wikipediaより転載)
受託開発では、顧客の希望を聞いた元請企業が要件を定義し、下請け企業に開発を委託をします。下請け企業は、要件定義通り(もしくは仕様変更された通り)に仕事を進めねばなりません。もし途中でいいアイディアが浮かんでも、それを提案することはできません。プロジェクト進行中に新しい技術が発表されて、このプロジェクトに生かせそうでも、それを取り入れるような柔軟な対応はできないんです。
受託開発で主流の「人月商売」では、企業は競争力を保てない
独自の機能やソリューションサービスといったプラスαの価値を提供する機会がない受託開発では、他社との差別化ができず、企業は競争力を保つことができません。競争力がないと、多重請負という構図の中で労働力が安く買い叩かれてしまいがちです。
これはエンジニアの月単価×人数という数式で受発注をおこなわれていることが関係しています。「人月商売」という言葉を聞いたことはないですか?単位を〇〇人月とすることから、そんな風に呼ばれているんですよ。
さらに、受注した仕事の全部または一部を、時間単価を下げて下請企業へ発注する再委託も頻繁におこなわれます。その下請け企業に時間単価をさらに下げて発注する再々委託も、そのまた下請け企業に時間単価をより一層下げて発注することも少なくありません。
下請けの下請けの下請け・・・と下層に行けば行くほど時間単価が下がり、悲しくなるほど安く働くエンジニアが発生するのが想像できますね。作業量の売買では企業は競争力を保てないため、労働条件の悪化も時間単価の低下も阻止する術がありません。
競争力を持つためには、付加価値を提供できることが大事
企業が競争力を持つためには、独自の価値を提供することが重要です。解決方法のひとつに、柔軟にプロジェクトを進めることができるアジャイルという開発手法があります。
(アジャイルソフトウェア開発宣言より転載)
アジャイルは顧客満足度を最優先し、計画に従うことよりも変化に対応できることを重視した開発手法です。より良い方法が見つかれば計画途中でも取り入れ、新技術が発表されれば積極的に導入する。そんなスピード感ある柔軟な対応ができるので、ベンチャー企業で採用されていることが多いんですよ。計画通りに進まないと困るウォーターフォール型とは大違いですね。
グローバルIT企業では、サービスビジネス(SaaS)への移行がかなり進んでいます。その一方、国内IT企業ではサービスビジネスを提供できるのはまだまだ先という企業も少なくありません。これは下の表のように、受注開発とサービスビジネスではビジネスの進め方も必要となる組織体制も全く異なるからなんです。
(引用元:受託開発からサービス(SaaS)へシフトできない理由)
昨今のクラウド技術の進歩は、さらにサービス化を進ませるといわれています。サービスビジネスを提供できる企業と従来の受託開発を続ける企業では、提供できる付加価値の差がどんどん開いてしまいそうですね。
価値創造は、エンジニアにとって大切なことです。多くのエンジニアは、企業の中で問題を発見し解決することで価値創造をおこなっています。より多くの価値を提供するため、アジャイル開発をおこなう企業を好むエンジニアも少なくありません。
では、まだエンジニアとして現場に出ていない人の場合はどうすればいいのでしょうか。
企業で仕事をしていないエンジニアは、自分で新しくサービスを立ち上げることにチャレンジしてみましょう。新技術やアイディアを柔軟に取り入れたサービスを作り上げて運用していくことで、問題を発見し、解決する経験を積むことができますよ。
価値創造の第一歩:身近なニーズを満たすサービスを立ち上げよう
そうは言っても、新しいサービスを作るというとハードルが高いと感じますよね。では最初は、身近なニーズを満たすことから考えてみましょう。自分のサービスを立ちあげることが、価値を生み出す第一歩になります。具体的にはどんなことをすれば良いのか、順に追って見てみましょう。
価値創造のステップ1:スキルをしっかりと磨く
まずは自分のスキルをきちんと磨きましょう。IT、ビジネス、イノベーションの3つのスキルを学ぶのがオススメです。
価値創造のステップ2:身近なニーズを見つけ、その解決方法を編み出す
どんな些細なことでも構いません。自分や周りの人が困っていること・欲していることを聞いて、書き出してみましょう。そしてそれを解決する方法がないかを探します。視点を変えたり、既存のサービスを応用させることで意外と簡単に解決できるかもしれませんよ。
価値創造のステップ3:解決方法をサービスとして一般の人に提供する
ステップ2で見つけた解決方法をサービスにして、同じように困っている人やそんなサービスを欲しがっている人に向けて提供しましょう。サービスを使ってくれた人の意見を反映して改善していけば、利用者の満足度も高まり、さらにサービスの利用者も増えそうですよね。
わかりやすくするために、大きく3つのステップに分けて価値創造の始め方を紹介しました。もしかするとスキルを磨いている途中に突然ニーズが見つかったり、一般の人への提供方法を考えるために、さらにビジネスのスキルを学ぶ必要があったりするかもしれません。ステップにこだわりすぎず、柔軟に進めることを大切にしてくださいね。
身近なニーズを満たしたサービスの具体例から学んでみよう
他の人はどんなサービスを作っているのか、気になりますよね。実際に運用されているサービスを具体例を挙げて見てみましょう。
Peing -質問箱-
Peing -質問箱-は、サウジアラビア発の匿名質問サービス「Sarahah」をヒントに、せせりさんという個人開発者が作ったサービスです。SNSを介して匿名で質問を募集・回答できます。Peingは、たった3週間で1日あたりのページビューは800万PV越えという驚異的な数値を記録し、リリースからわずか1か月後に事業譲渡がおこなわれました。買収金額は2600万円という噂です。
このようにサービスが軌道に乗ると、企業への事業譲渡で大きく稼げる可能性があるんですね。
スクヒカ
スクヒカは、東京フリーランス CTOのとだこうき(@cohki0305)が開発し、2019年9月にリリースしたプログラミングスクールの口コミ・比較サイトです。
既存のプログラミングスクールのレビューサイトにはステルスマーケティングやネガティブ・キャンペーンが少なくありませんでした。健全なレビューを集めて多くの人が安心してスクールを選べる社会にしたいという想いから、受講者のリアルな声を掲載するサービスを立ち上げたんですね。Twitterのタイムラインを追うと、地域でスクールを探せる機能、言語でスクールを探せる機能、信頼性を担保するための工夫などが日々追加されているのがわかります。
スクヒカは、まだリリースして1ヶ月しか経過していないサービスです。レビュー数を増やすための取り組みやUXのさらなる改善など、これからますますおこなわれると予想されます。サービスのブラッシュアップをリアルタイムで観察することができる機会は貴重ですので、注目しておきましょう。
まとめ:スキルを磨き自分でサービスを展開して、価値あるIT人材になろう
価値あるIT人材になるには、スキルを磨くことが大前提です。その上で、自分でサービスを立ち上げて運用してみると、価値を創造する術を実践的に習得できますよ。
最初のサービスはノウハウが足りず失敗してしまうかもしれません。ですが、そこからも学べることがあるはずです。学んだことを次に活かしていく気持ちが大切ですよ。
既にエンジニアとして仕事をしている人も、これから学ぶ人も、今の自分のレベルでできることから始めてみましょう。