- Webマーケティング
- 2021.07.25
「請負契約」と「準委任契約」の違いを復習しましょう!
前回は、よく見る契約書のタイトルである「業務委託契約」にも、「請負契約」と「準委任契約」の2つがあることを学びました。
この2つの契約の大きな違いは、成果物があるかないか、そしてその成果物の完成が仕事の内容になっているかどうか、でした。また、請負契約も準委任契約も、指揮命令は、受注者側にあります。発注者側に指揮命令権があると、派遣契約や通常の労働者として働く雇用契約になってしまいます。
また、前回の記事で詳しく触れていないのですが、仕事の完成が必要ということで、請負契約の報酬の支払いは成果物納入後になります。さらに、成果物にバグなどがある場合には、やり直してバグのないものを納入する「瑕疵担保責任」を追うことにもなります。
これらをまとめると下記の表のようになります。
成果物の有無 | 報酬支払い | 瑕疵担保責任 | 指揮命令 | 規律法 | |
請負契約 | あり | 成果物納入後 | あり | 受注側 | 民法 |
準委任契約 | なし | 一定期間後 | なし | 受注側 | 民法 |
民法の改正ってどういうこと?
まず、民法というのは、私たちの生活の基本的なルールを定めている法律です。民法は全体で1044条もあってとても長いのですが、大きく分けて、契約関係を規律する債権法と、結婚や親子関係などを規律する家族法と呼ばれる部分があります。
今回の改正は、債権法の部分が多く変わるので、「債権法改正」とも言われています。当然、フリーランスがお仕事を受注する際の契約関係にも大きな影響があります。
どこが変わるのかを押さえることで、来年から民法が変わっても、スムーズに対応できます。
ちなみに、今回の改正民法が実際にルールとして適用されるのは、2020年4月1日からです。2020年4月1日以降に締結する契約書は、改正民法の内容にする必要がありますので、気をつけましょう!
では、これから実際の改正民法のうち、「業務委託契約」に特に関係があるものを見ていきましょう。
請負契約:瑕疵担保責任に関する改正
では、ここからは、実際の改正ポイントを確認しましょう!
フリーランスに不利な改正① 「瑕疵担保」から「契約不適合」への名称の変更
これまでの民法では、フリーランスが発注者に納品したシステム/プログラムにバグなどがあった場合、発注者が契約を解除したり損害賠償ができる規定があり、これを「瑕疵担保」と呼んでいました。
今回の改正では、この瑕疵担保責任における「瑕疵」という言葉を削除し、「目的物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない」(=「契約不適合」)という言葉に変更になりました。
何をもって「契約の内容」とするのかは、まさに契約書に定める事項です。今まで以上に、契約書に仕様をしっかり書き込み、トラブルを避けましょう。
この改正は、実務を取り込んだものといっても、これまで以上に契約書をしっかり作る必要が出てくるという点で、フリーランス側に不利になりやすい条項であると言えます。
フリーランスに不利な改正② 新たに代金減額が可能に
これまでの民法では、瑕疵担保責任の内容として、発注者は①修補請求、②解除、③損害賠償請求ができるだけでした。
今回の改正で、上の3つに加え、④代金の減額請求ができるようになりました。
納品物が、契約不適合(契約で定めた内容を満たしていない)場合には、本来もらえる報酬から減額がされてしまうことになるので、不利と言えます。
フリーランスに不利な改正③ 責任追及期間の延長
発注者が瑕疵担保責任をフリーランスに請求できる期間は、これまでの民法で納入したときから1年以内と定めていました。しかし、今回の改正で、納品後に発注者が不具合を知った時から、1年以内に延長されます。発注者は、この期間内に、契約不適合があった事実を通知することで、責任追及が可能になります。
この改正は、納品後すぐにはバグなどが発見されにくいため、発注者側に時間的余裕を持たせるためになされました。
一方で、これでは、フリーランス側が納品後いつまでも責任追及をされる可能性があり、不安定な立場に置かれます。そのため、「知った時から1年以内」というルールに加えて、責任追及ができる期間を、「引渡しから最大5年以内」に制限しました。
これにより、例えバグを知った時から1年以内だったとしても、納品から5年が経過していれば、責任追及はできません。
フリーランスに有利な改正① 瑕疵の修補請求に制限
従来の瑕疵担保責任の内容には、「このバグを直してください」と発注者が言える、修補請求というものがありました。
確かに、本来備えているべき重要な機能がなかった場合に、修補請求は有効ですが、この機能の追加に多くの時間と労力がかかる場合には、フリーランス側にかなり不利になってしまいます。
そこで、改正民法では、修補請求につき、契約不適合な箇所が重要かどうかによらず、過分な費用がかかる場合には、修補請求ができないようになりました。
フリーランスに有利な改正② 未完成でも報酬を請求可能に
請負の報酬は、完成した仕事の結果に支払われるものとされ、途中で契約が解除されるなどした場合については、報酬の支払いについて特にルールがありませんでした。
一方で、例え途中で契約が解除されても、解除時点での納品物に価値があれば、その分の報酬を受け取っても発注者側に一方的に不利とは言えませんし、この点を巡って数多くのトラブルや訴訟が起こっていました。
そこで、改正民法では、①仕事を完成することができなくなった場合、②請負が仕事の完成前に解除された場合のいずれかの場合には、途中の結果のうち可分な部分によって注文者が利益を受けるときは、請負側が、その利益の割合に応じて報酬の請求をすることが可能と明文化されました。これはフリーランスにとって有利な変更です。
まとめ
今回は、2020年4月1日から改正民法について、請負契約の改正点をまとめました。かなり、盛りだくさんの内容でしたね。フリーランスにとって不利になる内容としては、瑕疵担保責任という言葉から、契約不適合責任となって契約の合意内容がより重視されるようになったこと、責任追及の手段が増え、期間も延びたことがあります。一方で、有利なこととしては、修補請求に制限かかかったことと、完成前でも報酬を受け捉える可能性が明文化されたことが挙げられます。
これらの改正点は、2020年4月1日以降に受注する仕事に適用になりますので、改正前の営業段階でも、改正を意識する必要があります。
また、今回の改正の多くは、契約書で書いた方が優先するものです。もし、民法のままでの適用が嫌だという場合、しっかり契約書に合意内容をまとめましょう。